交代行列の定義と性質
まずは定義の確認から。
交代行列とは正方行列$A$に対し、$A^{T}=-A$となるものをいう。
以下では、これを使っていくつか性質(例題)を紹介する。
例題1:対角成分は0
これはメインサイトで紹介したものだが(元記事)、再掲する。
行列を思い浮かべれば自然とわかるものだが、
交代行列は対角成分が$0$となる。
これを確かめよう。
まず上の定義より、交代行列なら$A^{T}=-A$となる。
つまり、$A+A^{T}=0$とできる。
成分で見てみると、$a_{ij}+a_{ji}=0$なので、
対角成分のみで見るので$i$で揃えると、
$a_{ii}+a_{ii}=0$である。
これを解いて、$a_{ii}=0$
つまり、対角成分は$0$
例題2:対称かつ交代行列ならば、ゼロ行列となる
これは簡単に確かめられる。
まず、対称行列ならば、$A^{T}=A$である。
そして、交代行列ならば、$A^{T}=-A$である。
これらをあわせて、$A=-A$であることがわかるので、
結局、$A=0$で、ゼロ行列となる。
例題3:対称と交代の和で唯一つで表せる
もっと丁寧に言えば、
『正方行列は対称行列と交代行列の和で唯一つで表せる』
というよくある一意性の証明。
上の例題2の応用ともとれ、そこそこ難しい。
下で証明してみる。
とりあえず、対称行列と交代行列は既知として進める。
そのうえで、行列$A$は
$A=\dfrac{A+A^{T}}{2}+\dfrac{A-A^{T}}{2}$とできる。
ここで、$\dfrac{A+A^{T}}{2}$は対称行列、$\dfrac{A-A^{T}}{2}$は交代行列となっているので、
『正方行列は対称行列と交代行列の和で表せる』までは示せれた。
あとは、一意性の証明。
$A$が対称行列$B$と交代行列$C$を使って、
$A=B_{1}+C_{1}=B_{2}+C_{2}$と二通りで表せたとしよう。
このとき、
$D=B_{1}-B_{2}=C_{2}-C_{1}$として、$D=0$を示せばよい。
なので(後付け的なやり方にはなるが)、
$B$が対称行列なので、
$D^{T}=\left( B_{1}-B_{2}\right) ^{T}=B_{1}^{T}-B_{2}^{T}=B_{1}-B_{2}=D$
$D^{T}=D$より、$D$は対称行列である。
$C$が交代行列なので、
$D^{T}=\left( C_{2}-C_{1}\right) ^{T}=C_{2}^{T}-C_{1}^{T}=-C_{2}+C_{1}=-D$
$D^{T}=-D$より、$D$は交代行列である。
以上より、$D$は、対称かつ交代行列なので、ゼロ行列(例題2)。
よって、$D=0$となって一意性が示せれた。$ \because )
B_{1}=B_{2},C_{1}=C_{2}$
おまけ
そこまで重要ではないのでおまけとするが、
$n$次正方行列の行列式で
$\left| A\right| =\left| A^{T}\right| =\left| -A\right| =\left( -1\right)
^{n}\left| A\right| $
なので、$n$が奇数の時に$0$となることがわかる。
これについては、そのままwikiに載ってあったので気になったら(wiki)。
まとめ
大体、上の事実を知っていれば交代行列で困ることはないと思う。
他に、行列式→固有値と進めば、まだ出てくるが、$A^{T}=-A$に従えば問題ない。
※例えば固有値$\lambda$を持つなら$-\lambda $も固有値だとか。
最後に宣伝までに、他にも線形代数の記事を書いているのでよかったらそちらも。
下のおすすめでリンクがあります。
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